再審の扉

弁護士玉木昌美(たまきまさみ)のえん罪日野町事件の活動ををご紹介します。

えん罪日野町事件報告 今年急展開の遺族による再審請求

滋賀支部 玉木昌美

  1. 日野町事件とは、昭和59年12月28日夜以降に発生した酒屋の女主人が被害者となった強盗殺人事件です。被告人にされた阪原弘さんは、3年以上経過したのちに本格的な捜査を受け、逮捕・勾留され、自白をさせられました。公判では否認し、無罪を主張しましたが、一審大津地裁で無期懲役に処せられ、控訴・上告は棄却されて確定しました。阪原さんは、再審を請求しましたが、大津地裁は、請求を棄却しました。これに対し、即時抗告をしたものの、その途中で阪原さんは死亡しました。平成24年3月30日、阪原さんの遺族らが大津地裁に再審請求をして5年あまりが経過しています。
    平成29年4月、裁判所の構成が変わり、交代した今井裁判長のもとで審理が進められることとなりました。
  2. この事件は捜査段階の自白と引き当て以外には阪原さんを有罪とする証拠がなく、典型的なえん罪です。この事件では、犯行の動機もなく、被害金庫は店頭にはないので、金庫を見て犯行を思い立つ(自白)はずもなく、秘密の暴露は何もありません。逮捕の決め手となった被害者の着衣にあったという微物の鑑定結果は、一審で証拠価値がないことが判明し、検察は論告でも触れることはありませんでした。
    一審は、自白はそれにより事実認定ができるほどの信用性がないとし、犯行の時刻も場所も被害金額もわからないが、阪原さんが犯人であるという判決を下しました(概括的認定)。
    毎日新聞が、論告直前に、主任裁判官が担当検察官に対し、予備的訴因の追加を促したことを暴いて報じた。検察官は、被告人の自白(日時・場所を特定)は間違いないとして公判を維持してきましたが、論告直前に、予備的訴因の追加を行いました。犯行場所は、「日野町内若しくはその周辺地域」となりました。一審は情況証拠で無期懲役にしましたが、二審は、さすがに情況証拠による認定を否定したものの、翻って「自白の根幹部分は信用できる」として有罪を維持しました。
  3. 本人の再審請求の段階で、殺害方法が自白の方法(座っている被害者の首を中腰で絞め殺した)ではできないことが明らかになりました。首が固定できないからです。遺体の手首の紐の結束も、肉屋類似のものではなく、肉屋で勤務した経験のある被告人と結びつける間接証拠にならなくなりました。
    本人の再審請求は、裁判官が普通に「疑わしきは被告人の利益に」の原則に従えば、開始決定がなされて当然でしたが、結果は、裁判官は「普通」ではなく、各論点について、個々に分断し、「記憶違いかもしれない。」「そうでない可能性もある。」「重要ではない。」「それだけで無罪とすることはできない。」と連発し、請求を棄却しました。殺害方法については、自白は「客観的事実との矛盾がある。」とまで言いながら、記憶違いかもしれない、としました。20数点の論点に「確かに弁護人の主張するとおりである」としながら、結論は請求を棄却した。ほとんどの論点で疑問があり、それが20数点にわたって重なれば、有罪判決など維持できません。再審請求を棄却した裁判官は、被告人が死刑か無期の強盗殺人事件で自白した以上犯人に違いないという偏見が根底にあるといえます。
  4. 遺族による再審は、三者協議を重ね、平成29年4月で35回に及んでいますが、その間、証拠開示を請求し、議論を重ねながら、開示証拠を増加させてききました。ちなみに、日野町事件では、本人の再審請求の段階で、検察官から、警察からの送致目録(一覧表)の提示を受け、その立証趣旨も明らかにさせていたが、これも大きく役立っています。検察官は、裁判所から指摘があれば、証拠の内容を明らかにし、証拠提出するというスタンスでしたが、開示請求を繰り返す中、新たに100点以上が証拠開示されました。
  5. 証拠開示によって、画期的な成果を勝ち取ってきました。引き当て捜査のネガの開示があり、金庫引き当てについて、金庫投棄現場から戻るときの写真が多用されていて、阪原さんが任意に案内して正解にたどり着いた、その都度写真を撮ったというストーリーが破綻しました。弁護側は、引き当ては、捜査官が答えのわかっているもので重視できないと主張してきましたが、任意に案内できたという捜査官の証言を鵜呑みにした判決は誤りだったわけです。
    さらに、昭和60年9月13日に逮捕状が発布されていたにもかかわらず、執行されないままであったことも初めて明らかになりました。
    捜査官が、被告人が主張するアリバイをつぶすべく、親戚関係者に工作していたことも判明しました。
    さらに、死体投棄現場における犯行再現も写真やネガの分析から実況見分調書記載の方法ではできないことも判明しました。
  6. 本件は、犯行現場も被害者の店舗であったのかどうかも不明のままです。 店舗内で殺害が行われたとすれば、同居していた高齢のおば、Tさんの存在が問題になります。証拠開示では、Tさんから事情を聴取した捜査報告書等が開示されましたが、それによれば、28日夜、被害者は店のある家で保険の勧誘をしている女性Hさんと一緒に酒を飲み、それから共同浴場に行った模様である。Hさんの調書も開示させたが、一緒に酒を飲んだのは27日となってす。当然、公衆浴場が営業されていたのがいつかが問題となり、捜査されているはずですが、それに関する証拠は開示されていません。被害者が28日夜公衆浴場に行っていたとすれば、阪原さんによるそのころ店内で殺害したという自白はありえません。弁護団は、28日の夜、共同浴場で一緒になったSさんから事情を聞き、新証拠として提出しています。
  7. 弁護団は、28日夜、阪原さんが泊めてもらった家の女性、Mさんから重ねて事情を聞き、Mさんの義兄の家にお浄め(宗教行事)に行き、その帰りにMさんの家で酒をよばれて眠り、朝までいた話を再度確認しました。「虚偽アリバイ」を主張したがゆえに犯人性が認定できるとした一審判決は理由がありません。
    弁護団は、引き続き証拠開示を請求しています。存在するはずの金庫投棄現場の写真やネガがすべて開示されないことも、捜査記録にある被害者の爪(DNA鑑定の資料となる)が紛失したというのもおかしいものです。
  8. 平成29年4月、交代した今井裁判長は、打合せ期日において、早期解決を考慮し、証拠開示の検討もさることながら、7月から証人の尋問に入ると決定しました。引き当て、犯行再現をした警察官、捜査を指揮し、阪原さんを起訴した検察官や殺害方法について鑑定した医師吉田謙一証人の尋問をしていくこととなりました。捜査官の尋問では、原審段階で、任意に案内させた点や犯行再現をさせて点について偽証であって自白は信用できないことが、殺害方法では、より明確に自白による殺害方法がありえないことが浮き彫りになることが期待されます。再審請求後、これまでは証拠開示での応酬を重ねてきましたが、これからは大きく展開し、尋問を行って、決定へ向けて動きだすことになります。
    事件の重大性に注目した裁判所の積極的な対応を踏まえ、弁護団は今後とも奮闘していくつもりです。
日野町事件遺族による再審請求をする弁護士玉木昌美ら弁護団
大津地方裁判所前
日野町事件遺族による再審請求をする弁護士玉木昌美ら弁護団の記者会見の様子
於 滋賀弁護士会
日野町事件遺族による再審請求について支援者たちに説明する
弁護士玉木昌美 於 滋賀弁護士会

 

再審とは

再審とは、確定した有罪判決を覆し、無実の人を救済するための制度です。その請求には、新証拠の提出が必要となります。再審事件においても、「疑わしきは被告人の利益に」の大原則が適用になり、新・旧証拠を総合評価して判断する、とされています(最高裁判例)。捜査段階でウソの自白を強要され、間違って犯人にされた冤罪事件の犠牲者は再審で救済されなければなりません。

全国の主な再審事件

  • 袴田事件 (静岡)
  • 福井女子中学生殺人事件(福井)        
  • 名張毒ぶどう酒事件(三重)
  • 日野町事件(滋賀
  • 大崎事件(鹿児島)
  • 筋弛緩剤えん罪事件(宮城)
  • 東住吉冤罪事件(大阪)
  • 東電OL殺人事件(東京)
  • 山陽本線痴漢冤罪事件 (岡山)         
  • 特急あずさ35号窃盗再審事件(長野)
  • えん罪姫路強制わいせつ事件(岡山)
  • 大阪地裁所長オヤジ狩り事件(大阪)
  • 西宮郵便バイク事件(兵庫)
  • 痴漢えん罪西武池袋線小林事件(東京)

「再審・えん罪事件全国連絡会ホームページ」より

近藤公人の事件簿

弁護士近藤公人が恐喝事件の被疑者国選で弁護人活動をした雑感をご紹介します。本人に出会って、話を聞くと青年は入れ墨を消す約束をしてくれました。そして、被害者とも示談が出来ました。

被疑者本人に会うと

スキンヘッドと入れ墨に被害者、これはヤクザだと思いましたが、話を聞くとヤクザとは全く関係がありません。単に入れ墨を彫ってその時に痛い思いをして、これを我慢すれば自分は強くなれると思い、入れ墨を彫ったというだけです。金額も多額でなく正当な金額の請求でした。入れ墨前の写真の青年を見ると普通の青年でした。

被疑者国選弁護で

恐喝事件の弁護人となりました。前刑も恐喝事件で執行猶予期間中の犯行です。誰もが正式裁判で実刑だと思います。
前刑は、彼女がお金を貸していたのでそれを取り戻すために脅した事件です。今回は、彼女が浮気して、その浮気相手からお金を取ろうと、深夜に呼び出し、入れ墨を見せて、恐喝したという事件です。被害金額は1万円ですが、あと9万円支払う約束をしました。

被疑者とは、入れ墨を消す約束をしました。理由は「痛い思いをしてこれに我慢すれば自分が強くなれると思ったのであれば、もう我慢して彫ったのであるから、入れ墨は必要ではないでしょう」と言ったところ素直に約束をしてくれました。被害者とも示談することが出来ました。

執行猶予期間中の再度の事件ですから

通常は正式裁判です。検事も家庭環境、被害金額、実際に浮気があった事実を考慮して実刑はかわいそうだと思い、不起訴にしてくれました。担当検事が違っていたら結論が変わっていたかも知れません。

被疑者ノートをもって

弁護士永芳 明(ながよしあきら)が弁護人活動をするために被疑者ノートをもって接見にいきます。この被疑者ノートの活用は単なる記録ではなく、様々な場面で活躍します。被疑者ノートについてご紹介します。

被疑者ノートとは

逮捕・勾留されている被疑者にご自身で取調の様子等を記載して頂くノートです。

捜査機関による取調は

密室で被疑者と捜査官だけがいるところで行われます。そのような密室の中で、時には捜査官は、被疑者を脅迫したり、困惑させたりして不当な取調をすることがあります。このような取調によって作成された供述調書が裁判で証拠として提出され、真実とは異なる内容によって、誤って処罰されてしまう事になるかも知れません。そのようなことが起こらないように、弁護人からは、取調の様子を録音録画するように申し入れすることもありますが、なかなか取調の録音録画がされることはありません。

最近では一部取調の録音録画がはじまっていますが 

取調の全過程ではありません。録音録画されていないところで、取調官が不当な取調をするかも知れません。そこで、捜査機関による録音録画がなされなくても、被疑者自身が取調状況等を記載することによって、取調べの状況を記録化し、弁護人が取調状況をチェックするとともに、将来の公判でおかしな内容の供述調書が証拠請求された場合にその作成過程を明らかにする資料として被疑者ノートが役立つのです。

被疑者ノートを持っている被疑者に対しては

捜査官も脅迫したり、困惑させたりといったおかしな取調をすることが困難になります。

実際私が担当した事件においても

取調官がやってもいない事件について自白を迫る様子や弁護人の悪口を吹き込まれた様子が被疑者ノートに記載されたことがあります。そこで、捜査官に抗議をする材料として被疑者ノートを活用した例があります。
また、具合が悪いのに警察がなかなか病院に連れて行ってくれないといった処遇上の問題についても詳しく掌握することが出来、改善申し入れに役立てた例があります。

被疑者ノートを活用することにより

不当な取調を受けることを回避できたり、虚偽の自白をさせられたり、不十分な処遇の防止につながるので、問題が予想される被疑者には、被疑者ノートを差し入れするようにしています。

弁護士走快 マラソン日誌

走ることは生きること

弁護士 玉木昌美

玉木昌美 私の趣味は走ることであり、昼休みや夕方に琵琶湖岸を走り、時折市民マラソン大会に出場しています。1991年8月、琵琶湖ジョギングコンサートで5キロを走ってから、運動音痴だった私の人生が完全に変わりました。走ることは生きることであるといってもよいくらいです。また、休みがとれたたまの日曜日、家族をおいてひとり走りに行くのはけしからんという抗議に、妻や子をマラソンに巻き込むことにより家庭サービスを実現しました。

ホノルルマラソン

1995年、子ども達が小4と小2で、ホノルルマラソンを家族全員で完走しました。その影響で小2のときホノルルのフルマラソンを完走した長男は、中学、高校、大学と陸上部で走り続けました(長距離と競歩)。

スタートラインに立てることは健康である証です(これまで体調を壊したり、膝を壊したりして医師から止められ休んだこともありましたが、奇跡の復活を遂げました)。気力を奮い立たせながら、ゴールに向かいます。他のランナーとの駆け引き等心理ゲームの面白さがあります。また、ゴールしたあとの達成感と完走後のビールのおいしさは格別です。次の大会のことを考えるだけでわくわくする楽しさがあります。さらに、びわこランナーズのメンバーや弁護士仲間は勿論のことあちこちの大会で出会う人と仲よくなり、マラソン仲間が増えていき、再会を楽しみにしています。

 2016年2月で還暦になりましたが、アンチエイジングでさらなる進化をめざしながら元気に走り続けています。加齢による体力の衰えを気力でカバーしているといえます。遅いながらもタイムにもこだわり続けています。

 2016年のベストタイムは、10キロは5月の鯖江つつじマラソンの50分13秒で60歳以上の部で116人中19位でした。ハーフは2月の香川丸亀ハーフマラソンの1時間53分31秒でした。3月に久しぶりに板橋Cityマラソンでフルを走りましたが、4時間53分49秒でした。
 
 2017年3月、ある工業高校に18歳選挙権、主権者教育をテーマに出張授業に出かけましたが、その高校では毎週全員が2・4キロ走るマラソンをしているということでした。「運動音痴だった私が還暦を過ぎても走ることに夢中になっている。次のマラソン大会をどこにするのか思うだけで楽しい。人生わくわくすることを持つことが大切です。」という話に力が入りました。

 仕事をしつつ、また、憲法運動等に積極的に参加しつつ、かつ、走り続けています。マラソンが人生を変えたといってもよいほど重要な意味を持っています。

ピースメッセージ2014

8月6日広島9日長崎に原爆が投下されてから69年。滋賀第一法律事務所の弁護士玉木昌美、近藤公人、永芳 明、樋口真也、事務局は、唯一の被爆国として核兵器廃絶の取り組みや平和を守る活動に参加しています。各弁護士のメッセージをご紹介します。

 

戦後69年が経過しました。これまで、憲法9条のおかげで、日本が直接の戦争の当事者になったことはありません。今年は、なんと、憲法に従うべき政府が、この憲法9条を「改正」せずして、日本が戦争することができるんだと,「解釈の変更」を行いました。
日本に平和をもたらした、この憲法9条を破壊する「解釈の変更」はクーデーターと言うべきで、全く許すことはできません。
来年は「戦後70年」、このまま「戦後」の年数のカウントが進んでいくよう、願わずにはいられません。

弁護士 永芳 明

集団的自衛権が閣議決定により認められました。これは、自衛隊が海外で武力行使が出来ることを意味します。しかし9条2項では「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めています。もし自衛隊員が、捕虜となった場合、どのように扱われるのか。
自衛隊は軍隊ではないと言われています(そう思いませんが)。国際法上、自衛隊員は兵隊ではないので、自衛隊員が捕まったとき捕虜扱いにならないのでは?などなど国際法上の問題が出てきます。
今までは、自衛隊が武力を行使できるのは、日本が武力攻撃を受けた時だけでしたから、このような問題は想定しなかったと思いますが、今後はこのような問題が起こりえます。

弁護士 近藤公人

 

国民は憲法を作った主体であり、名宛人は政府である。平和や人権を守るために政府に命令をし、守らせることにしている(立憲主義)。いかなる政権も憲法に従わなければならない。安倍政権のように勝手に解釈で憲法を変更し、集団的自衛権を容認すると言っても、無効である(憲法の最高法規性)。「憲法が変わるとどうなるかピンとこない。」という人がいるが、戦争に駆り出され、あらゆる人権が否定された戦前を思い起こすといい。平和も人権も日本国憲法が前提になっているのだ。集団的自衛権を認めることは「戦争をする国」変えることだが、戦後一人も殺し殺されることがなかった奇跡の国日本をやめていいだろうか。

弁護士 玉木昌美

 

人種や信条、性別など個人の人格に関わる価値は全ての人間において平等です。
人格価値において優劣はありません。また、自分が正しいと思うことが他人にとっても正しいとは限りません。そんなの当たり前です。ですが、昨今は自分だけが正しいかのような言動や他人の属性や生き方に(外国人やマイノリティ)寛容さを失っていると感じる事象が気になります。このような寛容性の欠如は平和の根幹を揺るがしやしないだろうか心配です。

弁護士 樋口真也

憲法メッセージ2014

5月3日は憲法記念日です。5月1日から7日までは憲法週間とされています。滋賀第一法律事務所の弁護士玉木昌美、近藤公人、永芳 明、木下康代、樋口真也、事務局は、日本国憲法の国民主権、平和主義と基本的人権の尊重を大切にする取り組みに参加しています。各弁護士のメッセージをご紹介します。

 

集団的自衛権を認めることは,他国間の戦争に首を突っ込んだり巻き込まれたりすることを意味します。とても危険なことです。国民的な議論が必要な憲法改正の手続きを取らずに,解釈の変更だけでできるはずがありません。戦争放棄は日本国憲法によって,国民と世界に向けた日本の大切な約束です。それを破ることになる集団的自衛権は絶対に認められません。

弁護士  永芳 明

 

普段の生活の中で憲法を実感することはあまりというか全然ないでしょう。それが普通です。でも、本当は当たり前の生活も憲法の存在によって、もたらされているかもしれません。憲法ってなんやろ?から、じっくりゆっくり考えていきましょう!

弁護士  樋口真也

 

改憲派は集団的自衛権行使ができる国にするため、憲法9条を憲法解釈で変えよう(解釈で違憲状態を作る)というのですが、なぜそうするのか明らかではありません。そもそも、集団的自衛権行使は自国の防衛とは関係なく、「海外で武力行使をする国」に変えることです。国家が人殺しを命じることにつながります。「もう二度と戦争をしない、武力で紛争を解決しない」と誓った平和国家をやめることは、日本にとってもアジア、世界の平和にとっても大きなマイナスです。「日米同盟」の名のもとでアメリカが行う国際法に違反する侵略戦争に付き従うことは誰も望まないことです。国民が平和で人権が保障されるためには、政府に日本国憲法を守らせることが必要です。

弁護士 玉木昌美

 

安倍首相は、集団的自衛権の解釈変更の質疑にて「最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私達は選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではない。私だ」と発言しました(2014年2月12日衆議院予算委員会)。
立憲主義は、基本的人権擁護のため、権力者を拘束する原理ですから、時の権力者が、勝手に憲法解釈を変えることができるのであれば、立憲主義の意味がありません。国民の多数の支持があっても政治家が従わなければならないのが憲法です。選挙で審判を受ければ何をやってもよいという考え方は、法の支配に反します。安倍首相の発言は、歴代の自民党幹部からも批判されています。立憲主義を守れ、という声を上げましょう。

弁護士 近藤公人

ピースメッセージ2013

8月6日広島9日長崎に原爆が投下されてから68年。滋賀第一法律事務所の弁護士玉木昌美、近藤公人、永芳 明、樋口真也、事務局は、唯一の被爆国として核兵器廃絶の取り組みに参加しています。各弁護士のメッセージをご紹介します。

戦後68年が経過しました。これまで、憲法9条のおかげで、日本が直接の戦争の当事者になったことはありません。昨今、この憲法9条を「改正」して、日本が戦争することができるようにしようという動きがあります。

しかし、日本に平和をもたらした、この憲法9条を「改正」する必要はありません。今回の参議院選挙で、「改憲」を主張する人たちが議席を伸ばしました。今後、憲法9条の改正に向けた議論が進むかもしれません。

でも、今後「戦時」を迎えることなく、平和な「戦後」が続くよう、願わずにはいられません。

弁護士 永芳 明

 

私は、昨年、戦争のことを忘れてはいけないとホームページで書きました。しかし、今や、日本人のうち戦後生まれは、億人を超えています。私は、父方母方、双方の祖父母から戦争体験を聞く機会が多くありましたが、身近に戦争体験者がいない若い世代も多いと思います。そういう世代にとって、平和を心底、実感する時とはどんな時なのでしょうか。私などは、休みの日に、鴨川を散歩したり、植物園にいると、「あー平和やなー」と感じます。そこには、戦争も、憲法もありません。平和と戦争は実感として結びつかないのです。それでも、私は、祖父母からの戦争体験をよく聞いていたからか、少なくとも、8月6日、9日、15日や、祖父の墓参り等の時には、戦争のことを話していた祖父の姿を思い出します。また、私は、法律家なので、平和と憲法のことも考えたりします。

では、法律家でもないし、身近に戦争体験者がいない若い世代は、どのようにして平和を戦争と結びつけて実感し、平和のことを真剣に考えればよいのでしょうか。戦争や憲法とすぐには結び付かなくても、ささやかな平和を大事にする気持ちがあれば、いいのではないかとも思ったりもしますが、皆さんはどのように考えますか。

弁護士 樋口真也

 

自衛隊と憲法と乖離があるので、憲法を変え軍隊を持とうという動きがある。

自衛隊は、法解釈的に違憲なのか。法解釈では、以下の通り専守防衛であれば合憲とされている(私は違憲説であるが)。国である以上、自衛権を有する。しかし、憲法9条2項で、「戦力」を放棄したので、軍隊を持てないが、「戦力」に至らない自衛権を行使できる。よって、自衛隊は、「戦力」に至らない自衛権の行使にとどまるので合憲である。これが内閣法制局の一貫した考え方である。

そして、自衛隊の海外派遣法は、この解釈の枠内で行われている。しかし、集団的自衛権の行使は、9条2項に抵触し認められない。政府見解によれば、決して、憲法と自衛隊は、乖離していないのである。

弁護士 近藤公人

 

「世界九条会議・関西2013」の成功へ
この7月の参議院選挙の結果、自民党が圧勝し、改憲勢力は3分の2に達しなかったものの、大きく過半数を超えました。衆参のねじれ現象は解消し、自信を得た安倍内閣は9条、そして、その露払いとしての96条改憲に向けて邁進するでしょう。選挙のときには世論を考慮して改憲を全面に打ち出すことはしませんでしたが、今後集団的自衛権行使を認め、「戦争をする国」に変えようと明文改憲・解釈改憲を進めることは確実です。
そうした中、日本国憲法の意義、その平和主義、平和的生存権の重要な価値を再確認し、国際社会において、平和への権利を人権として認める運動をさらに強化する必要があります。
今年10月13日午前10時から大阪市中央体育館で、「世界九条会議・関西」という1万2000人の集会が予定されています。国際的にも著名な方がゲストとして参加されます。
滋賀における憲法運動をさらに拡大強化し、改憲勢力の野望を打ち砕くべく、この大集会にみんなで参加し、成功させましょう。きっと、憲法9条が日本にとっても世界にとってもますます光り輝くものとなることを確信できると思います。

弁護士 玉木昌美

 

憲法メッセージ2013

5月3日は憲法記念日です。5月1日から7日までは憲法週間とされています。滋賀第一法律事務所の弁護士玉木昌美、近藤公人、永芳 明、樋口真也、事務局は、日本国憲法の国民主権、平和主義、平和主義と基本的人権の尊重を大切にする取り組みに参加しています。各弁護士のメッセージをご紹介します。

 

憲法は、国民の権利を守る大切なもの。
憲法を遵守するのは国民ではなくて国家権力です。
また、このような大切な憲法は,簡単に変えられない
ことに意味があります。
今こそ,憲法とは何なのか,という本質に立ち返って
憲法に関する様々な問題を考えていきましょう。

弁護士  永芳 明

 

「憲法は何のためにあるのか。」から、憲法改正問題についても考えていく必要があると思います。
冷静かつ十分な議論のないまま、憲法が改正されてしまわないように、憲法を学んだ法律家の立場から、できることをしたいと思います。

弁護士  樋口真也

 

「戦争で得たものは憲法だけだ(作家城山三郎)。」310万人の日本人と2000万人のアジア人の犠牲のうえに獲得した平和憲法。9条を変えるために憲法96条の要件を変える策動を許すわけにはいきません。アメリカに追随し、海外において侵略戦争に加担して人殺しができる国になることは、日本の国民にとっても、世界の平和にとってもとんでもないことです。「国防軍」は自衛隊が単に名称を変えることではありません。憲法9条2項をやめることは、国家が国民に人殺しを命じる根拠を与えるものです。軍隊や武力で平和を守ることはできません。領土問題で勇ましい発言をする政治屋に惑わされてはなりません。平和憲法の大切さを一人でも多くの国民に広めていきましょう。

弁護士 玉木昌美

 

生存権が危ない。
自民党の憲法改正草案では、生存権の条文には、手を加えていませんので、今までどおり、生存権がそのまま保障されたと思ってはいけません。
自民党の憲法改正草案では、「家族は、互いに助け合わなければならない」という項を提案しています。憲法は、国家権力を制限することに本質がありますので、家族について規定すること自体おかしなことです。
そして、家族の自助を求めることは、まず生活保護の申請の前に、家族が援助すると自分の生活が大変であっても、家族に援助を求め、家族が援助すると自らも生活保護と同等となるときに、初めて生活保護を受けさせることになるでしょう。従って、実質的に、生活保護の切り下げをしているのと同じです。

弁護士 近藤公人

【記者会見】栗東市たばこ貸付住民訴訟事件

煙にまかれるな 栗東市民の大切な税金

栗東市たばこ貸付住民訴訟事件  大津地方裁判所2013年2月22日提訴にあたって

 平成14年6月20日、栗東市は、株式会社ジェイティーアールたばこサービス(現株式会社CSR)に対し、金3億円、平成15年3月31日、同様に金2億円を貸し付けました。
栗東市は、この貸付前に、平成12年9月29日に金3億円、同年12月26日、金2億円に株式会社ジェイティーアール(現株式会社TSR)に貸付をしています。
平成13年11月16日、株式会社CSRは、株式会社TSRから、販売先の営業譲渡受け、たばこ販売業者だとして、栗東市に借入の申込をしています。
しかし、株式会社CSRと株式会社TSRの代表者は同じであり、株式会社CSRの住所・電話番号・印鑑は、代表者の住所・電話番号・印鑑と同じです。
栗東市は、たばこ税の税収入を目的として、平成11年9月までは、たばこ税収入に応じた奨励金を出していました。これが総務省に違法だと指摘され、貸付条例を制定し、たばこ税を納めるという約束をしてもらい、その代わりに株式会社TSRに合計5億円の貸付を行い、さらに、事実上同じ会社である株式会社CSRに、さらに5億円の貸付をしました。
貸付は、条例で1事業者5億円と決まっていますので、株式会社CSRに対する貸付は、脱法行為となり、違法です。
そこで、栗東市が元市長に対し、損害賠償を請求しなさいという訴訟を、栗東市住民5名が提起しました。
提訴後に記者会見をする
玉木昌美弁護士・近藤公人弁護士(写真左から2人)と原告のみなさん

ピースメッセージ2012

8月6日広島9日長崎に原爆が投下されてから 67年。滋賀第一法律事務所の弁護士玉木昌美、近藤公人、永芳 明、樋口真也、事務局は、唯一の被爆国として核兵器廃絶の取り組みに参加しています。各弁護士のメッセージをご紹介します。

 

私は、戦争を知りません。でも、祖父母は戦争体験者なので、幼い頃からよく戦争の頃の話を聞いていました。祖母からは、大阪大空襲で、家が焼け命からがら逃げ惑ったこと、近くに1トン爆弾が落ち、人や馬が吹き飛ばされ電柱や電線に引っかかって命を落としていた悲惨な様子などその当時の様子を鮮明に語ってくれました。また私が一番尊敬している亡き祖父は、寡黙で戦争についても多くを語ることはなかったのですが、晩年、戦時満州に滞在していたこと、その後約4年間にわたりシベリアに抑留されていた頃の生活、帰還後の苦労などを詳しく話してくれました。今後近いうちに戦争体験者はこの日本からいなくなります。あの戦争は自分たちには関係のない遠い過去のもの、そんな風になっては絶対にいけないと思います。今の私たちがあるのは、あの戦争時代を苦しみながらも生き抜いてくれた方々のおかげだからです。少なくとも、長崎、広島の原爆、終戦に至ったこの8月には、あの戦争によって命を奪われたすべての方の無念に思いを馳せ、絶対戦争はしてはいけないとの思いを強く再認識したいと思っています。誰もが平和を願い、平和の大事さを胸を張って言える日本であってほしいと切望します。

弁護士 樋口真也

 

今年で,終戦から67年が経つそうです。私は今年42歳,「戦後」の約3分の2を生きてきました。その間,元号が「昭和」から「平成」に変わり,日本人の大半にとって,戦争がどんどん過去の出来事になってきています。
しかし,危険な兵器,オスプレイが日本に配備されたり,普天間基地の移設問題が解決されなかったり,被爆国である我が国で原発から放射能漏れが起こったり,国内でも,戦争に関連する問題が絶えず起こり続けています。海外では,イラクはアメリカ軍が撤退しても安定せず,シリアでは内戦が起こり,絶えずどこかで戦争が続き,犠牲者が出続けています。
国内,国外の色んなことを考えるときに,戦争のことを忘れないようにしたいと思います。

弁護士 永芳 明

 

戦争は、命を奪うのは当然であるが、戦争で命を奪われなくても、その人の人生を奪う。戦争は個人の尊厳と相容れない。平和しかない。

 刑法の視点で、戦争を見よう

 戦争は、相手国の戦闘員や国民を殺す行為、すなわち、国家による殺人行為である。なぜ、国家であれば、殺人罪が免責されるのか、わからない。

 ミサイルで建物を壊せば、建造物損壊罪に該当する。

 日本政府は、武器や戦闘員の輸送(兵站)は戦争行為ではないという。しかし、犯罪行為をする人を犯行場所に運ぶ行為は、少なくとも、「幇助犯」として、処罰される。通常は、正犯として処罰される。兵站行為は、違法である。

弁護士 近藤公人

 

日本国憲法9条2項は、「戦力は持たない、戦争はしない。」としています。この規定が「日本を戦争ができない」と権力を縛っています。これは画期的なことです。「自衛隊は実質軍隊ではないか、他国が国際紛争に武力で介入するとき、日本ができないのはおかしい。」などと改憲勢力は言います。しかし、自衛隊は軍隊とされていないから、他国の人を殺すことも、他国の人に殺されることもないのです。そうした状態が60年続きました。日本のこどもたちは徴兵制もなく、幸いにして「戦争を知らない。」のです。「軍隊は国民を守らない、武力で紛争を解決することはできない。」これは歴史の教訓です。原発だらけの日本を攻めるのに核兵器は要りません。他国が日本を攻撃しようとするなら、原発に通常爆弾を落とせば足りるのです。しかし、抽象的に「攻められたら。」と軍隊で武装することを考える必要はありません。日本が武装すれば、戦争中毒のアメリカの侵略戦争の片棒を担ぐだけなのです。ベトナム戦争、イラク戦争等を見れば明らかです。それでも憲法9条2項を変えたいですか。まともな国民は必ずノーというはずです。

弁護士 玉木昌美