「物損事故」としていいですか

このところ、交通事故の法律相談で、事故で負傷した被害者側の相談を受けましたが、警察官から「物損事故にしますか。人身事故にしますか。」と問われ、わからないままに物損事故扱いにした事故の件が続きました。

物損事故となれば、実況見分等の捜査はなされず、記録が作成されません。のちに損害賠償請求の裁判等紛争になったとき、被害者側はその立証に困ることになります。警察官は「物損事故扱いでも保険会社は人身の損害の給付をします。」と説明し、物損事故に誘導する姿勢まで見受けられるケースもあるようです。事故に遭った人はその違いを理解できないまま警察官のアドバイスに従うことになります。

仮に、人身事故扱いを希望する場合でも、事故の当事者はすぐに病院で診断書を取得して提出したらよいこともわかりません。警察官は、物損事故と人身事故の違いを丁寧に説明したうえで、選択をしてもらい、人身事故にする場合の処理をアドバイスする必要があります。細かい事件の捜査をなるべく減らしたいという警察の意向が優先され、過失相殺等事故状況が問題になるケースできちんとした捜査がなされないことがあってはなりません。

事故に遭ったら、まず専門家である弁護士に相談し、機敏にその対応をしていくことが必要です。

弁護士 玉木昌美