相続・遺言

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■はじめに

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相続は誰もが直面する可能性のある問題ですが,難しい用語が少なくありません。ここでは,相続の一般的な流れや手続きと遺言について,簡単に紹介したいと思います。

注意していただきたいのは,事案によっては,異なる手続きとなる場合もありますし,専門的知識を必要とする事項も含まれていますので,不安な場合には,是非一度お気軽にご相談ください。

 

■相続の流れ

人が亡くなると相続が発生します。相続人の間で,遺産をどのように分割するのか話し合いで決めることを,遺産分割協議といいます。遺産分割協議の成立には,全ての相続人の同意が必要ですから,一人でも同意しない相続人がいる場合には,家庭裁判所において遺産分割調停という手続きをする必要があります。

例えば,遺産の範囲,遺産の評価(不動産や株式などの評価額),特別受益(生前に多額の贈与を受けた相続人がいる場合の相続分の減額など),寄与分(生前に介護などによって遺産の形成を助けた場合の相続分の増額など)などについて,意見の対立が生じることがあります。

 

■遺産分割調停

遺産分割調停は,家庭裁判所において,調停委員が各当事者の言い分を聞いて,利害を調整し,当事者間の合意を目指すものです。各当事者が,対面して話し合うことはないのが通常で,裁判所で,調停委員を介して,言い分を主張し合うというイメージです。

調停は,原則として当事者本人が出頭する必要がありますが,相手方となる当事者の住所地を管轄する家庭裁判所で行われるのが通常ですので,遠方の裁判所になることもあります。しかし,そのような場合でも,電話会議システムを利用し,例えば,当事者本人は,依頼した弁護士の事務所に行き,事務所と遠方の裁判所との間で,電話会議で調停をすることも考えられます。

この遺産分割調停において,当事者間の合意ができない場合,調停は不成立として終了し,自動的に遺産分割審判という手続きに移行します。

 

■遺産分割審判

遺産分割審判は,簡単にいうと,当事者から提出された資料や言い分をもとに,裁判所が,誰に,どのような遺産を,どのような方法で,どのくらい分割するか,を決める手続きです。

ただし,裁判所は,遺産の範囲や,特別受益,遺産の評価などについて,調停段階で合意がある範囲においては,合意を尊重します。また,調停の際に提出した書面や資料についても,審判の判断材料となりうるので,調停のときから,審判への移行を念頭に置いて,しっかりした準備をする必要があります。

 

■調停や審判を回避させるためには

これまで説明しましたとおり,遺産分割は,全ての相続人の合意がない場合,調停や審判といった裁判手続きが必要となり,時間,労力,費用を要するものとなります。そして,最終的に解決するまで,遺産である預金を払い戻したり,不動産を処分したりすることもできません。

もし遺言があれば,このような煩雑な手続きを回避することができますので,相続人は,まず遺言の有無を確かめることが必要です。

公正証書による遺言の有無は,相続人であれば最寄りの公証人役場で調査することができますし,存在する場合には写しを取得することができます。ただし,調査や写しの取得には,戸籍謄本等の必要書類が必要ですので,事前に問い合わせをされるとよいと思います。

このように,遺言は,煩雑な手続きを遺族に回避させる方法となりますから,自分が死んだ後,できる限り,遺族に無用の紛争を残さないためにも,遺言の作成を検討すべきだと思われます。

 

■遺言の方式

遺言書には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言などがあります(秘密証書遺言はあまり利用されませんので説明を省略します)。

自筆証書遺言は,一人で作成できますので,一見簡単な方法ともいえそうですが,遺言書本体の作成について厳格な要件が定められており,遺言者死亡後には家庭裁判所において検認という手続きが必要となるものですから,その有効性が問題になるケースも少なくありません。したがって,自筆証書遺言を作成するとしても,法律の専門家による助言やチェックはしてもらった方がよいと思います。

他方,公正証書遺言は,法律の専門家である公証人によって方式や内容の不備による無効を回避できることや,公証人役場に保管される点で改ざんのおそれもありませんので,確実な方法といえます。

下記のとおり,遺言作成については,注意すべき点もありますので,不安な場合は,ご相談ください。また,遺言作成をご依頼いただいた場合,遺言書案の作成,公証人との事前の打ち合わせなどは弁護士において行うことも可能ですので,詳しくはお尋ねください。

 

■遺言作成についての留意点(その1)

遺言は,誰に,どのような遺産を,どのくらい相続させるかを決めることができますが,例えば,父親が遺言書を作成し,相続人は子供が2人の場合,次男には一切相続させないということすると,遺留分(相続人のために確保される一定割合の相続分)が問題となる場合があります。

つまり,次男には,法定相続分の2分の1の割合の相続財産を取り戻す権利が発生し,次男が他の相続人に対し,この権利(遺留分減殺請求権)を行使した場合には,相続人間に紛争をもたらすことになります。

したがって,遺留分を侵害しない遺言内容が望ましいといえます。もっとも,遺留分減殺請求権を行使した場合であっても,遺留分を侵害する遺言もその限度で無効となるだけで,侵害していない範囲では有効となります。

やむをえず遺留分を侵害する遺言を作成される場合であっても,そのような遺言をする理由を記載するなどして,できる限り相続人間の紛争を避ける工夫が必要だと思います。

 

■遺言作成についての留意点(その2)

特に遺産が多岐にわたる場合などは,各遺産を詳細に特定する必要がありますので,預金通帳,不動産登記簿謄本,株式,保険証券等の資料に基づいて,各遺産内容を記載する必要があります。

また,遺産に漏れが生じて,別途遺産分割が必要という事態にならないためにも,「その他一切の遺産は○○に相続させる」などの条項は忘れずに記載すべきです。