手紙を書け

弁護士 玉木昌美

 世界的に有名な彫刻家である佐藤忠良氏は「汗をかけ。恥をかけ。手紙を書け。」と言っています。汗をかいて努力し、失敗して恥をかいて向上し、そして、手紙を書いて人間関係を作っていくことが重要であるというわけです。ここ数年、中学校や高校へ出張授業に行くことがあり、子どもたちにはその重要性を伝えるようにしてきました。

「手紙を書け」はすぐに礼状を書けということにつながります。何かをしてもらったら、お礼の気持ちをすぐに伝えることが大切です。法律家の間でも頻繁に文書や資料のやりとりをしますが、送ればすぐにお礼状が返ってくる人もいますが、要請を受けて資料を送付しても「ありがとう。」の一言もなく、何の反応もない人もいます。

クレジットサラ金問題で被害者救済運動に人生をかけ、すばらしい活動をされてきた大先輩の木村達也弁護士(大阪)は何かを送付すればすぐに絵葉書に感想を書いて送ってくださいます。全国レベルの集会等を開催される場合には、当該府県の事務担当者に絵葉書攻勢をかけるというのも有名な話です。さすがに全国レベルの運動を展開される先生は違う、と心から尊敬しています。先生からいただいた絵葉書は心のこもった温かい言葉が多く、いつも励まされ、その絵葉書の数は夥しいものとなり、アルバムができそうなくらいです。私は木村先生を見習い、マラソン大会で行った際に美術館で購入した絵葉書を使用してお礼状を書くようにしています。

これまで司法修習生の指導を担当してきましたが、講義や個別指導でも手紙を書くことの重要性を強調しています。修習生の中には「弁護修習は、僕にとって全国の修習生の誰よりも素晴らしい弁護修習となったと思っております。」と礼状をくれた方もありました。

人間お互いに励まし合って生きる、そこに感動があるのだと思います。